これがゲームデザインという仕事なのです
本書は、おもしろいゲームをつくれるようになりたい、すべての人に向けた書籍です。誰もが身に付け、そして実践できるゲームデザインのノウハウがここにあります!
そのゲームデザインを発展させた『Pokémon GO』のおかげで世界が変わりました。その一つに、迷宮入りだった事件の死体が見つかったりしています。ふだん車しか使わないアメリカ人がポケモンを探して歩いた結果です。そんなふうに現実に働きかけをするタイトルはそれまでありませんでした。
ゴールを見据えたアイデアをもとに発注から調整までのサイクルを繰り返すことによって、ゲームをおもしろくしていく。これがゲームデザインという仕事なのです。
ゲーム開発者への道を着実に歩んでいるようですね。まずは、おめでとうございます。ゲームデザインと開発は創造力を発揮するのに最適な場所です。誇りを持って取り組んでください。骨の折れる仕事ですが、挑戦することを決めたその気概に称賛をおくります。
ゲームデザインや開発におけるプロジェクト管理の詳細については、上の Ask Gamedev によるビデオを参考にしてください。プロジェクトのスコープ、開発の所要時間、プロジェクト管理ツールの詳細、ゲームのロードマップ作成などのテーマを取り上げています。
バーチャルグラフには、例えばゲーム内ですれ違った人、オンライン上で1回一緒にプレイした人との関係性などが含まれます。『ドラゴンクエストX オンライン』(2012年、註14)のゲームデザインもバーチャルグラフをうまく組み込んだものです。同じ世界のなかに他者もいる。しかしゴリゴリの強い関係性ではない。モニターの向こうの他者をほとんど意識させない軽さが日本的と言えます。
あくまで、ゲームを開発するチームメンバーとともに、一歩一歩ステップを踏みながら、ゲームをおもしろいものへと作り上げていく作業こそが、ゲームデザインなのです。
このようにフォトリアルな技術の見せ合いになっていたシューティングゲームの世界に、日本ならではのTPS(註5)を持ち込んだタイトルが『スプラトゥーン』(註6)です。キャラクターが銃弾のかわりにインクを放出しているわけですから、本物志向を求めるのとは真逆の発想です。相手の頭を撃ち抜くかわりに、インクで塗る面積を競うというゲームデザイン、銃弾をインクに変えるというたったひとつの変更によって、「相手を多く倒したほうが勝ち」というシューティングゲームの基本的な枠組みをつくり変えてしまいました。
これらのツールを使って分析できるのは Planet Zoo だけではありません。事実、このようなゲームデザインの原則は、巡り合ったあらゆるゲームを解釈するために用いることができます。秘密のコードを解読するようなものだと思いましょう。次にゲームをするときは、ゲームデザイナーのように考えてみてください。「この仕組みが特に優れていると感じるのはなぜか?」 「このゲームをやめられないのはなぜか?」 以前よりもこのような質問に答える心構えができました。さらに、ゲームのプレー体験も役に立つでしょう。
この5年間でゲームデザインの新しい潮流をつくったタイトルをひとつだけ挙げるとしたら、2016年に発表された『Pokémon GO』(註8)でしょう。技術的には拡張現実(AR)を活用していて、ゲーム内でポケモンが登場したときに、カメラで現実の背景とポケモンを合成していることで生まれる体験の新しさがあります。日本のプレイヤーはそういうのをうっとうしく感じるきらいもあるようですが、海外のプレイヤーはカメラを使って現実の背景にポケモンが出現する様子を見て驚きたい願望がある。それはよりリアルでないとポケモンの存在を体感できないからです。
ゲーム開発者になるには、さまざまな要素を考慮する必要があります。ここでは、ゲームデザインに関わるいくつかの重要なヒントを掘り下げます。具体的には、ゲームの楽しさ、機能、マーケティングの部分について取り上げます。
『スプラトゥーン2』(註7)であたらしく加わったサーモンランというモードも、日本的なゲームデザインの事例ですね。複数のプレイヤーで協力し、迫りくる「シャケ」を退治して「イクラ」を回収、納品するゲームモードですが、これは本来ルドゥス的なシューティングゲームのなかにパイディア的要素を持ち込んでいます。みんな「お仕事お仕事」とか言いながら嬉々として取り組んでいるのも、世界的には珍しい遊ばれ方です。
さらに具体化していきましょう。ゲームデザインは実務的な作業ですから、どのように進めていくべきかという「手順」があります。最初に行うのは「ゴール設定」、そのゲームで達成したいことをはっきりと定義する最も重要なステップです。それに続いて、ゴールを実現するために具体的になにを作るかの「アイデア出し」を行います。そこで出たアイデアをもとに、チームメンバーにそれを作ってもらうよう「発注」し、メンバーとコミュニケーションをとりながら「実装」を進めていきます。そして最後に、できあがったものを仕上げるための「調整」作業を行います。
実際にはいないが、トリコが本当にいるような気がする。トリコの見た目はフォトリアルの路線とも言えますが、現実らしさを優先したデザインではなく、あくまで架空の造形です。そのような架空のキャラクターに対してリアルを感じさせるプレゼンスの構築が、日本のゲームデザインの大きな特徴ではないかと思っています。
Nintendo Switch™、PS5™、Xbox Oneなど、ゲームをプレイする端末の進化にともない、ゲームのグラフィックスも飛躍的に進化しています。この学科では、魅力的なキャラクターや美しい背景など、ゲームを彩る映像に躍動感を与えるゲームデザイナーを育成。4年間でこれからのゲーム機の進化にも対応できるゲームデザインの技術・知識を身につけます。